昨年大ヒットした映画、『ボヘミアン・ラプソディ』。
世界中で話題になり、日本でもたくさんの方がこの映画をご覧になられ感動されたことと思います。
10年ほど前にも木村拓哉さん主演のドラマの主題歌にクイーンの曲が起用されたことがきっかけで、ベスト盤や関連商品が大ヒットし再評価されたこともありました。
そして今回も『ボヘミアン・ラプソディ』のヒットによりクイーンの関連商品のセールスは好調のようです。
こうして時代を超えて人々を熱狂させることからもクイーンの楽曲の素晴らしさとその普遍性、メンバーの魅力的な個性をうかがい知ることができますね。
『ボヘミアン・ラプソディ』は特に若い世代からの評価が高いことが注目に値します。
リアルタイムでクイーンを知らない世代をも熱狂させ、感動させる力がクイーンにはあるのですね。
クイーンをリアルタイムを知る親世代と、新鮮に感じる若い子供世代が同じ映画も見てその感動を共有できることなんてとても素晴らしいことと感じます。
この『ボヘミアン・ラプソディ』、アカデミー賞の受賞が期待されますが、一足先にエディ賞の長編映画編集賞(ドラマ)を受賞しました。
ところで、エディ賞、ご存知ですか?
『ボヘミアン・ラプソディ』が受賞したエディ賞とはどんな賞?
エディ賞と聞いてもピンとこない方が多いでしょう。
エディ賞とは正式にはアメリカ映画編集者協会(ACE)によって優れた編集と認められた映画やドラマなどに与えられる賞です。
『ボヘミアン・ラプソディ』が受賞したのは第69回のエディ賞になります。
日本では知られていませんが、アメリカ映画界では比較的歴史のある賞になります。
こちらの賞、元々は1950年に協会がアカデミー賞候補者を晩餐会に招いたことがきっかけで始まりました。
本格的に協会が独自の賞を与えることになったのは1962年から。
協会の会員は編集技師で構成されていて、会員になるにはいくつかの条件を満たさなければなりません。
例えば、当たり前ですが会員になることを希望する、会員の2名以上の推薦がある、60ヵ月以上の映画またはドラマなどの編集経験があること。
つまり業界で一流とみなされている人でなければ会員にはなれないということです。
会員になると、署名に協会の足ら文字であるA.C.Eと入れることを許されます。
エディ賞は長い歴史の中で一時は会員数の減少などによりその権威を失いかけた時期もありましたが、現在もアメリカ映画界で権威ある賞の一つとして認められています。
アカデミー賞の前哨戦の一つのような位置づけとしても捉えられいるようです。
映画界の賞レースを楽しまれる方はこうした比較的規模の小さい映画賞からどの映画がアカデミー賞のどの賞を受賞するか予想するための目安にし、賞レースのクライマックスであるアカデミー賞当日を迎えるのです。
賞レースであり、映画界のお祭りでもあるのですね。
『ボヘミアン・ラプソディ』はこのエディ賞で優れた編集であることを認められたわけですが、編集のすごさって…何?
編集のすごさが分からないなんて…
映画通の人の大きな溜息が聞こえてきそうです。
居酒屋で聞きたくない溜息の一つですね。
比較的ライトな映画ファンの方には編集に注意して映画をご覧になることはあまりないのではないでしょうか。
しかし、私達観客は制作者が工夫を凝らした編集の技巧を無意識の内に感じ取っているのです。
映画で着目されがちなのは俳優の演技力やストーリーの内容などです。
アカデミー賞でも主演男優賞や作品賞などに注目が集まったりニュースでもそこを中心に報道されることが多いです。
優れた編集は、俳優の演技力やストーリーと同様に映画を見るものに大きな影響を与えます。
というより、それらはそれぞれ分かれている要素ではなく、互いに噛み合って調和を生み出さなければならないのです。
ストーリーのある場面にはそれにふさわしい演技があります。
編集は登場人物の葛藤や物語のリズムを生み出すのに不可欠でありさらにそれを引き立たせる効果があるのです。
俳優の表情を観客が見てその感情を読み取りやすいように配慮したり、まるで自分が映画の中にいるかのように観客が集中してストーリーを追うことができるような没入感へ誘います。
登場人物の感情を読み取ってもらうために丁寧に時間を割きすぎればストーリーのリズムが失われてしまいますし、かといってその時間を短くし過ぎることで観客が理解できず置き去りにされてしまうこともあるのです。
編集者はこの適切なバランスを見つけるために日々試行錯誤を行い観客が楽しみ感動を得られる映画作りを行っています。
そして重要なのは優れた編集は、優れていれば優れているほど気づかれないのです。
というより気にならないという方が正しいのかもしれません。
ですから観客はリラックスしてストーリーの中に没入し、登場人物に感情移入することができるのです。
それを妨げるものは邪魔ということです。
いい仕事をすればするほど注目されなくなるのはなんだか皮肉なものです。
ですから、こうした映画賞でその編集技術が称賛される機会というのが必要であるとも理解できます。
エディ賞とは?ボヘミアン・ラプソディが受賞、アカデミー賞も期待まとめ
普段は気に留めることのない編集技術。
この機会に今年見る新しい映画に限らず、何度も見た過去の名画についてもその編集技術に着目して観てみてはいかがでしょうか。
新しい発見や魅力が見つかるかもしれません。
追記
第91回アカデミー賞の授賞式が日本時間25日に行われ、「ボヘミアン・ラプソディ」が主演男優賞(ラミ・マレック)、音響編集賞、録音賞、編集賞の最多4部門を受賞しました!
コメントを残す