2019シーズンのプロ野球開幕まで、1ヶ月を切りました。
今年はどんなドラマが見られるのか、楽しみにされている野球ファンは多いでしょう。
昨シーズンの日本シリーズは、パリーグ2位から勝ち上がった福岡ソフトバンクホークスの優勝で幕を閉じました。
このシリーズで大きな話題となったのは”甲斐キャノン”です。
ホークスの甲斐捕手の強肩の凄さから、”甲斐キャノン”と形容されました。
甲斐捕手はその自慢のキャノン砲で、対戦相手の広島東洋カープの盗塁を次々に阻止しました。
高い打撃力に加え、常に先の塁を積極的に狙う機動力を生かした攻撃的な野球がカープのスタイルでした。
しかし、その機動力は甲斐キャノンによって阻まれ、それにより攻撃のリズムを崩したカープは主導権を握ることなくシリーズを終えることになりました。
捕手の強肩は、野球の守備において有利に働くことは事実ですが、これほどまでに取り上げられるほど目立つことはありませんでした。
それも、日本シリーズの行方を捕手の強肩が左右するというのは、オールドファンでも経験がないのではないでしょうか。
過去にも強肩の捕手はいました。
一昔前なら、ヤクルトでプレーした古田捕手、オリックス・西武・日ハムなどでプレーした中嶋聡捕手、そして、ホークス・阪神・メジャーリーグのマリナーズでプレーした城島捕手らです。
彼らも時代を象徴する強肩捕手でしたが、”甲斐キャノン”ほどに取り上げられたことはありませんでした。
2017年頃から『Full-Count』などの野球メディアでは、その強肩をアニメのガンダムに登場するような「キャノン砲」に例えて、”甲斐キャノン”と紹介するようになりました。
さて、この”甲斐キャノン”の凄さとはいったいどのようなものなのでしょうか。
甲斐キャノンの肩が半端ない!盗塁阻止率は?
捕手の肩の能力を表す指標の一つとして、盗塁阻止率があります。
盗塁阻止率とは、相手が仕掛けてきた盗塁に対して、どのくらいの割合で阻止したのかを示す数値になります。
一般的には阻止率が4割を超えると、”強肩”とみなされます。
ちなみに、日本記録は1993年にヤクルトの古田捕手が記録した.644です。凄まじいですね。
さらに、古田捕手はルーキーイヤーで.527を記録すると、13年連続で阻止率4割以上を記録し、プロ通算では.462という記録を残しています。
城島捕手は、2002年に自己ベストの阻止率.508を記録すると、2007年にはメジャーの舞台でリーグトップとなる.465を記録しました。
甲斐捕手は新シーズンでプロ5年目となります。
2017年シーズンに102試合に出場して1軍に定着し、この年は阻止率.324を記録しました。
昨シーズンの2018年は133試合に出場して、ホークスの正捕手として活躍しました。
そして、阻止率はリーグトップの.447を記録しました。
昨年に初めて阻止率4割をマークした甲斐捕手ですが、記録を見るとそこまで圧倒的というわけでもありません。
それにも関わらず、日本シリーズでのセンセーショナルな活躍は、強肩で鳴らした歴代のレジェンド捕手達を連想させるものでした。
甲斐キャノンの凄さの理由は?
盗塁阻止率の高さは、”甲斐キャノン”の凄さを示していますが、それだけではありません。
送球の二塁到達タイムも速いのです。
甲斐キャノンの捕球から二塁到達までのタイムは1.71~1.8秒です。
平均は2秒前後です。
わずか0.1か0.2秒の差になりますが、オリンピックの100m走をイメージしていただければ、それが盗塁阻止にどのくらいの違いをもたらすかが伝わるかと思います。
盗塁阻止率を上げるのに”捕手側”で出来ることは、まず投球を捕球してから送球までの動作をスムーズかつ速くすることです。
そして、もう一つが送球の精度を上げることになります。
捕手はただ投げているのではなく、送球を受け取る味方の野手が捕球しやすく、かつ相手走者にタッチしてアウトにしやすい位置に正確に投げなければなりません。
甲斐捕手はこの、捕球からの送球動作・送球精度・肩の強さの3つを高いレベルで併せ持っています。
“捕手側”で、と申したのには理由があります。
盗塁の阻止は投手と捕手との共同作業だからです。
一般的にランナーが二塁に到達するまでには3.2秒掛かると言われます。
守備側はが盗塁を阻止するためには、投手の投球から捕手が二塁へ送球する一連のプレーを、3.2秒以内かさらに速くしなければなりません。
そのためには”投手側”が投球動作を速めなくてはならず、そのために行われるのが「クイックモーション」なのです。
甲斐捕手が、平均の送球タイム2秒を1.8秒に縮め、さらに投手が投球動作を1.25から1.2の間で済ませることによって”甲斐キャノン”は実現しているということになります。
さらに、捕手とランナーとの駆け引きがこれに加わります。
ランナーは投手の投球動作の癖を読んだり、カーブやチェンジアップなどの球速の遅い変化球のタイミングを見極めて盗塁します。
捕手は、ランナーに盗塁させないために直球などの速いボールを投げさせたいのですが、それがバッターに知られると配球が読まれてしまいます。
ですから、巧みにバッターとランナーと駆け引きを行いながら配球を選ばなければなりません。
捕手の送球技術・投手のクイックモーション・ランナーとの心理的な駆け引き、これら3つの要素が高いレベルにあることで”甲斐キャノン”はあの凄まじい威力で盗塁を阻止できるのです。
(甲斐キャノンは2:55あたりから)
甲斐キャノンの肩が半端ない!盗塁阻止率は?凄さの理由は?まとめ
普段、何気なく見ている盗塁とそれを阻止する守備側の攻防ですが、そこには緻密な技術の積み重ねとバッテリーのチームプレーによって支えられていることが分かりました。
昨年のカープのように、一度”甲斐キャノン”のイメージが植え付けられると、それで相手の攻撃への抑止力になり、その勢いをそぐことができます。
ランナーが消極的になれば、投手はさらに投球に集中できるようになり、守備側にとって有利な好循環が生まれるのです。
細部ですが、そこに拘って違いを生み出す姿勢は、実に日本の”野球”らしい個性ですね。
昨シーズンは猛威を振るった”甲斐キャノン”ですが、ライバル達も対策を練ってくるでしょう。
今年はさらに進化した甲斐キャノンが見られるのか、要注目です。
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