甲子園・春のセンバツは2回戦に入りました。
28日には、エース奥川投手を擁する石川・星稜高校が敗れるという波乱がありました。
星稜高校のエース奥川投手は、プロが注目する大会屈指の逸材です。
その才能は、3年生の春にして、すでにプロのスカウトから非常に高い評価を受けています。
これだけのピッチャーがいることから、星稜高校は優勝候補の筆頭という大会前の下馬評でした。
しかし、2回戦の千葉・習志野高校との対戦では、星稜の攻撃陣が攻めあぐね、逆に習志野打線は奥川投手を攻略し、3-1のスコアで習志野高校がベスト8に進みました。
星稜・奥川投手、横浜・及川投手、履正社・清水投手ら、プロ注目の投手らが大会序盤で甲子園を後にしました。
大会前の予想からは大きく外れた展開に、今後の優勝争いはさらに面白くなりそうです。
しかし、この28日の星稜×習志野が大きな話題となったのは、試合結果だけではありませんでした。
試合後、星稜高校の林監督は習志野高校が”サイン盗み”をしていたと訴えたのです。
“サイン盗み”とは、野球において塁上のランナー、それも特に2塁ランナーが相手キャッチャーのサインを確認してバッターに伝える行為を指します。
非紳士的であるという理由から、明確に禁止されている場合もありますし、明確に規定されていなくても不文律になっている場合もあります。
また、塁上のランナーだけでなく、球団やチーム関係者が観客席で同様の行為をし、無線などでベンチに連絡するという事例もあります。
星稜高校の林監督は、試合中にも”サイン盗み”についてアンパイアに抗議し、4回表の習志野高校の攻撃では審判員が協議する場面もありました。
しっかりとした証拠を出して証明しなさい。できなければ単なる誹謗中傷の類になる。
甲子園大会の主なサイン盗み、スパイ疑惑…星稜・林が習志野のサイン盗みを主張 #SmartNews https://t.co/Mj9yPJM57V
— junerisa (@Junerisa) 2019年3月29日
しかし、星稜・林監督の怒りは収まらず、試合後には習志野高校の小林監督に直接抗議。
さらに高野連にも対応を求める事態となり、試合そのもの以上に大きな話題になっています。
試合を担当した審判団と高野連は、共に「”サイン盗み”は見られなかった」という判断を明確にしています。
さて、”サイン盗み”はあったのかなかったのか。
今回は、習志野高校のサイン盗み行為について検証します。
習志野サイン盗み行為のしぐさや動作は?経緯について
星稜高校の林監督は、試合を通して習志野高校が”サイン盗み”をしている疑念を抱いており、アンパイアにも度々クレームを伝えていたそうです。
特に問題視されているのは、4回表の習志野高校の攻撃時です。
この時、二塁上にいるランナーが、星稜のキャッチャーのサインを覗き見て、ジェスチャーなどなんらかの方法でバッターに伝えていると星稜・林監督は主張しています。
1-0で星稜がリード、4回1アウト・ランナー2塁、4番高橋を迎えた場面で、星稜・山瀬捕手は北田球審に習志野のサイン盗みを指摘したそうです。
直後に1-1の同点。さらにピンチは広がり、ピンチは満塁に広がります。
8番兼子が初球をファウルにした場面で、星稜・林監督は二塁を指さしてベンチからアンパイアに抗議します。
この抗議を受けて、アンパイアは審判員を集めて協議を行いました。
その結果、「反則はない」との結論に至り、プレーは再開されました。
この際に、二塁ランナーには「紛らわしい動作はしないように」との注意が与えられたそうです。
なお、注意はこれだけで、習志野の監督やベンチへの注意は行われませんでした。
試合終了後、判定に納得のいかない星稜・林監督は、習志野高校の控室を訪れて習志野・小林監督に直接抗議。その際に、「フェアじゃない、証拠はありますよ。映像ここで見せてもいいんですよ」と発言したと伝えられています。
これによって、”サイン盗み疑惑”は表面化し、高野連が異例の会見を行う事態に発展しました。
会見にて高野連は、現段階では「サイン盗みはなかった」との最終結論を発表しています。
選抜高校野球の「大会規則9」には、「走者がベースコーチや捕手のサインを盗み打者に伝える行為は禁止する」という規定があります。
2000年以前はこのような規定はなく、”サイン盗み”は試合の一部、駆け引きの一部でもありました。
有名なところでは、1998年の夏の甲子園で松坂投手擁する横浜高校とPL学園の対戦です。
甲子園屈指の熱戦として今だに語り継がれている一戦ですが、この試合でPL学園は”サイン盗み”で松坂投手に対抗していたことが知られています。
当時、”サイン盗み”は特別”汚い”行為ではありませんでした。
しかし、その後ルール改正が行われ、現在”サイン盗み”は明確に反則と規定されています。
それにも関わらず、「サイン盗み疑惑」は後を絶たないというのが現状です。
習志野サイン盗み行為のしぐさや動作は?真相を映像で確認!
中継映像を確認し、時系列を追って見ていきたいと思います。
場面は4回表、習志野高校の攻撃です。
1アウト・ランナー2塁・4番高橋(45:25~)
スコアは1-0で星稜のリード、短いゴロからのダブルプレー崩れで2ランナーが残りました。
バッテリーは習志野の4番・高橋選手を迎えます。
-
- 1球目:ランナーはリードを取っただけ、スライダー、ストライク
- 2球目:ランナーはヘルメット右側を触る、同じくスライダー、ボール、バッターの視線は終始ピッチャーへ向かいランナーを見ている様子は見られない
星稜・山瀬捕手が北田球審に習志野のサイン盗みを指摘(映像には映ってません)
- 3球目:ランナーの動きは確認できず、スライダー、逆球(キャッチャーの要求とは逆)、ストライク(カウント1-2)
- 牽制
- 4球目:ランナーに動作は見られない、ストレート外高め、ファウル
- 5球目:ランナーに動作なし、ストレート(インハイ、やや抜けた球)、バッターは打ち上げたものの(打ち取ったあたり)ショートとレフトの間に落ちるポテンヒットになる
2球目の映像
1アウト、ランナー1・3塁、5番・櫻井(48:20~)
ランナーの様子は確認できませんが、代わりにバッターの視線を追いました。
ランナーから何かサインのようなものがあれば、バッターはそれを確認するはずだからです。
バッターがランナーを見る様子は見られません。
バッターはインコースの半速球はチェンジアップに詰まってサードゴロになります。
三塁ランナーの挟殺プレーの間に、一塁ランナーはセカンドへ進塁、バッターランナーもセーフになりました。
状況は、2アウト、ランナー1・2塁に変わりました。
2アウト、ランナー1・2塁、6番・竹縄(50:36~)
- 1球目:セカンドランナーに目立った動作なし、インコースやや高めのストレート、ストライク
- 2球目:セカンドランナーに動作なし、外に構えたストレートが抜けてやや中に入る(バッターにとってはもったいない球)、ストライク(カウント0-2)
- キャッチャーマウンドへ
- 3球目:ランナーに動作なし、ストレート、外低めに構えるも抜けてインコースやや高めへ、バッターはファウル、ストレートがシュート回転している
- 4球目:ランナーに動作は確認できず、外高めにやや抜けたスライダー、バッターは打ち上げたがライト前に落ちてヒット、セカンドランナーがホームインし1-1の同点になる。
2アウト、ランナー2・3塁、7番・山内(53:19~)
セカンドランナーの竹縄選手は、足に自信があるのかリードが大きく、画面の端や外に出てしまい動作はほとんど確認できません。
- 1球目:ランナーの動きは確認できない、外のストレートが外れてボール
- 2球目:ランナーの動きは確認できない、外のストレートが高めに外れてボール(2-0)
- 3球目:ランナーの動きは確認できない(リードが大きい)、インコース高めのストレート、ストライク
- 4球目:ランナーの動きは確認できない(リードが大きい)、インコース低めのストレート、外れてはいるがバッターが打ってファウルに(カウント2-2)
- 5球目:ランナーに動作なし(リードが小さくなった)、外に構えたがストレートが真ん中低めに抜ける、ボール(カウント3-2)
- 6球目:ランナーに動作なし(リード普通)、インコースに構えるもスライダーが抜けて外れる、パスボールかと思われたがバッターの足に当たってデッドボールの判定、満塁になる
同点、2アウト満塁、8番・兼子(55:09~)
- 1球目:ランナーの動きは確認できない(リードが大きい)、腰くらいの高さの外のスライダー、バッターはこれをファウルにし1ストライク星稜の監督がクレームをつける様子が映る、プレートアンパイアがセカンドへ向かい、審判団の協議が始まる問題なしとして、プレー再開2アウト満塁、カウント0-1
- 2球目:外に構えたがストレートは真ん中へ入る、バッターはこれを打ち上げてセンターフライとなり3アウト、習志野の4回表の攻撃が終了する
習志野サイン盗み行為のしぐさや動作は?経緯や真相を映像で確認!まとめ
中継の映像を検証した結果、習志野の選手に”サイン盗み”と見られるジェスチャーは確認できませんでした。
また、バッターがランナーを確認する仕草もほとんど見られませんでした。
球種によって、特徴的な動きや仕草も見られませんでした。
しかし、中継の映像はピッチャーの背後からの視点であるため、ベンチ側からの視点ではどのように見えるのかは全く分かりません。
少なくとも、後ろからの視点では問題となるような行為は見られませんでした。
検証の結果分かったことはもう一つありました。
奥川投手が苦しんでいたという事実です。
ボールが抜けてコントロールが定まらず、全体的にボールが上ずっていました。
ストレートはシュート回転して右へ抜け、スライダーも思うように制球ができず苦しんでいます。
4回表については、習志野の攻撃により高い能力があれば、星稜は大量失点していてもおかしくなかったでしょう。
星稜・林監督は、習志野の”サイン盗み”を確信している様子で、強く憤っています。
中継の映像では確認できなかったため、証拠映像を提示するべきでしょう。
習志野高校の選手も、星稜高校と同じ球児です。
夢の舞台でのプレーを楽しむためにも、次の試合までに疑惑が明確になることを望みます。
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